君 に 願 う 1 0 の 願 い
 05-行かないで







敵が撤退していくのを見届けて、一息入れるのもつかの間、ロックオンが敵の艦隊に向かったことを知った。急いで通信回線をデュナメスに繋ぐと、画面上にロックオンの姿が映し出される。片目が使えないと、かなり神経を使うのではないかと思ったが、彼は普段通り優しい顔で問うてきた。

「どうした、アレルヤ」

それは僕が聞きたいことだ。
右目が使えない今、彼の実力は多分半分も出せないだろう。カプセルから無理矢理出てきたときも心配だったのに、本当に戦闘に加わるだなんて。
ティエリアの行動をやり過ぎだなんて言いつつも止めなかったのは、彼の体の傷が心配だったから。コクピットをひどくやられて、それでも生きているなんて奇跡に近いのに。

「ロックオン、どうして・・・!」

言ってはいけないことだと、なんとなくわかっていた。彼には戦う理由がある。その理由は教えてもらえなかったけれど。だからこそ、彼はソレスタルビーイングにいる。
案の定、ロックオンは驚いて目を開き、それから真剣な顔で言った。とたん、普段は見たこともないような、険しい顔つきになる。

「理由があるからだ」

ああ、と思った。思った通りだ。
その意志の強さに惹かれたことは嘘じゃない。だけど、どれだけ好きだと説いても、体を重ねても、結局彼との距離は縮まらなかった。
何を知ったつもりになっていたんだろう、僕は。

「ロックオン、僕は・・・」
「アレルヤ」

何を言おうとしているのか、わからないままに名前を呼んだ。この名前だって、作戦上の呼び名であるだけで、本当の名前なんて知らない。
何も、知らない。
頭の中がぐるぐるとかき回される。何か言わなきゃ、と思うのに。

「僕は・・・ッ」

言葉が続かない。言いたいことはたくさんある。なのに、言葉にならない。
何度も何度も好きだと言ってきた。その言葉すら、今は知らない言語のように、うまく口にできない。
その答えの行方を、聞いたことがなかった。それでもいいと思ってた。だけど、今聞かなくては一生返って来ないのではないかという思いが過る。その理由を探って出てきたものは、死んでほしくない、なんて縁起でもないことだった。
死んでしまうのか、彼は。このまま、もう触れることも叶わずに、行ってしまうのだと思ってるのか。
思考が深い闇を作る。それを破ったのは、ロックオンの声だった。

「アレルヤ、ごめんな」
「え」

何が、と尋ねることができない。頭の中でだけ繰り返されて、声に出ない。
なに。何に対しての謝罪なの。

「アレルヤ、」
「ロックオン・・・?」

「          」

「え、え?聞こえないよ、ロックオンッ」

だけど通信は途切れていて、自分の叫びに近い声だけが響いた。
彼が何かを言ったことだけはわかった。その言葉を聞くことができなかった。
ただ、嫌な予感だけが体を包んでいた。

「ロックオン、行かないで」

まだ僕は、あなたの答えを、あなたのことを、何も聞いていないのに。




***
拍手SS「03-忘れないで」の対になります(現在はlog内に置いてあります)。アレルヤ視点。
アレ→ロクと見せかけてのアレロクです。こっちだけだととアレルヤの独りよがりみたいだよ!
このあとせっちゃんが色々してくれたりするけれど端折った!(おま)いつか書けたら。

お題:君に願う10の願い