僕らの出会いはきっと


定められた運命のよに。









俺の席に誰かが居た。

昇降口前で分けられたクラス表と教室の位置を確かめて何とか辿り着き、前黒板に書かれた席順から自分の出席番号を探す。

廊下側から2列目の後ろから3番目だとわかって、知らないクラスメイトの横を通り抜け、自分の席まで来たというのに。




「誰だよ・・・」




そいつは我が物顔で・・・といってもうつ伏していて顔は見えないけれど、俺の気配に気付かずに爆睡していた。

明るめの茶髪から覗く耳朶には赤くて丸い小さなピアスが光っている。

校則違反はお互い様だから特に難癖付ける気はないが、よく教室に入れてもらえたなと思うほど派手な格好だと思った。



「わりぃ!そいつ席違うだろ」




いきなり大きな声が聞こえたのに驚いて横を見ると、叩いたら景気のいい音がしそうな坊主頭のデカい奴が笑いながら向かってきた。

野球部か剣道部だろう。ガタイの良さと髪型からも伺えるが、この2つの部活は厳しさと実力で全国に名を馳せている。



「知り合い?」

「同中でさ。おい、祐多!起きろって」

「・・・んぁ・・・?」



さすがにデカイ声に気付いたのか、ぼんやりと開かれた目と俺の目が合った。―――と思ったらまた額を机にぶつけて寝ようと構える。



「ばっか、起きろよ!」




坊主頭が椅子を蹴ると、吃驚したのだろう祐多と呼ばれた奴は飛び起き、今度は確実に俺に目線を合わせ睨み付けてくる。

綺麗な顔だ、と瞬間的に思った。どのパーツを取っても申し分ないけど、女っぽいわけではなく、独特の艶を持ったような顔。

そして、心なしか涙目だ。余程驚いたのだろうか。




「何すんだよ!」

「俺じゃねぇよ!」

「俺だよ!」

「お前かよ!」



あろうことか俺に非難をぶつけてきた、俺の席で睡眠中だった不届き者は、相手を間違えたことに気が付くと、申し訳なさそうに眉を下げた。

その姿がどこか、飼い主に怒鳴られて落ち込む犬のように見えて仕方がない。




「わりぃ、輝人が居ンのに気付かなくてさ!で、俺になんか用?」

「ひでぇなお前・・・」



ガタイの良い坊主頭改め、輝人は本当にショックを受けたように首を傾げて泣いた真似をする。

それが似合わなくて、目を逸らすと、シカトされてやんの!と祐多が、今度は猫のように笑った。



「何か用って・・・お前席表ちゃんと見た?」

「え、決まってんのか!?」

「決まってんのかって・・・黒板見ろよ」




祐多は勢いよく黒板を見つめるけれど、目を細めたり逆に大きく見開いたり、首を傾げたりと不思議な行動を取っている。

数回それを繰り返したあと、祐多は頭を掻きながらくるりとこちらを向いた。くるくると表情の変わる奴だ。




「コンタクト入れ忘れたんだった」

「ばーか」

「うるせッ」




生き返った輝人は再び悪態を吐かれると、大袈裟に泣き喚くフリをして、もう知らないっと若干オカマ口調でこの場を去っていった。

そんな輝人に見向きもせずに俺らは会話を続ける。




「で、お前、名前は?」

「・・・松浦」

「松浦な!よろしくー」




差し出された手を暫く凝視して、握手を求められたことに気付いた俺は右手を祐多の手に触れさせた。

今時初対面で、しかも高校生同士が握手を交わすなんて、と頭の片隅で思う。

暖かな春の陽気に似つかわない、とても冷たい手だった。




「お前何番よ」

「へ?」

「出席番号。見てやるから」

「まじで?俺ね、26番!」




言われた番号を前黒板で探すとすぐに見つかった。とてもわかりやすく、そしてどこか冗談のような運命。




「お前俺の隣だわ」

「うっそ!やべー運命感じちゃうっ」




こいつの中学では女口調が流行っていたのか・・・と考えているうちに、祐多は自分の通学鞄を手に隣の席まで移動する。

そしてこちらを向いて、目を細めて笑うともう1度手を出してきた。




「よろしくな、松浦!」

「・・・おう」




その手に触れて、軽く握り返す。

俺の熱が祐多の手に伝わって触れる温度は同じになる。




僕らの時間はここから始まる。




それは楽しいことばかりじゃあないけれど。






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ブログに掲載したものを少し修正してみました。
若干は読みやすくなったかなぁ、と。。
目指すはさらりとドロドロなBL。がんばります。