ひとつひとつ、俺の存在自体が そもそも間違っている。



lie or true.



6月も終わりに差し掛かる。
梅雨は本格的になって、今日も朝から雨が降っていた。
雨はダルいから、という理由で時任は部屋に残っている。
俺は、



―おれは。



立ち止まる、目の前には猫の死体。
1年前を思い出して。
そして。もっと昔を思い出す。



「ごめん、ね」



今隣に居てほしい人が、ここに居ないから。
俺を動かす、我侭な―。
・・・誰だっけ。



頭が痛い。
本当も嘘もない。



「帰ろ・・・」



猫の死体の上に情けか何かわからないけど、傘を置いて。
何を求めていたのか、わからなくなった頭を抱えて。





***





ポケットから鍵を取り出して中に入る。
タタタタ、と足音を立てて人が出てくる。



「あれ、久保ちゃん。めずらしー自分で鍵使うなんて」



「・・・ああ、時任」



「どしたの、びしょ濡れじゃんか」



「そうだっけ」



「いや、そうだっけ。じゃなくって!俺タオル取ってくる」



そして騒々しく音を立てて洗面所に入る。
そうだっけ。
・・・時任が、居たんだ。
俺が拾った猫。死んでほしくない、猫。



「はい、久保ちゃんっ」



「時任」



「え、何?」



「拭いて」



玄関マットの上に敷かれたタオルの上に、裸足になって乗る。
じっとり張り付いた上着を脱いで、俺は言った。



「・・・どしたの、久保ちゃん?」



「うん」



「いやだから・・・、・・・まぁいいや。」



諦めたように言うと、時任は俺の体を拭き始めた。
眼鏡が濡れてることに気付いた俺は、ゆっくり外して、置く場所がないから弄ぶ。



「時任」



「何、久保ちゃ、ん・・・っ」



少し屈みこんで、唇を重ねる。
触れるだけのキスに、時任は拙く答える。



「ん、」



唇を離すと時任は顔を真っ赤にしてにらんだ。
あ、ちょっとなみだ目・・・。



「イキナリ何すんだよ、久保ちゃん!」



「いや、お前が舌いれたんだろ」



「そうだけど!」



「時任」



「何!」



「・・・本当は、どこに行ったんだろうな」



「は?」



イキナリな質問に目を丸くさせる時任にわからないように小さく笑う。
この笑いはなんだろう。微笑みか、自嘲か。



「あと、俺自分で拭くから」



「え、ちょっと・・・」



洗面所に入った俺は風呂を沸かそうと浴室に入る。



本当は、ここに居ちゃいけない俺が。
のうのうと普通の暮らしをしている俺の。
本当の生き方は、どこにある?



ざぁざぁ叫ぶ水の音が煩かった。



next?





***
前サイトから。