血ぬれて横たわる、赤い肢体 それを抱えて叫ぶのは――――





d a y d r e a m





「―――ッは、あ・・・」





目を開いたらTV画面にGAME OVERの文字が映されていて、それがどことなく気味悪く思えて乱暴に電源を落とした。





「そんなにしたら壊れるっしょ」





キッチンから来たのだろう――ガラスのコップを手にした久保田は時任に水を差し出す。
気持ちの悪い汗をかいていることに気付いてシャツで拭うけれど、シャツさえも汗で湿っていて思うように拭きとれない。
それに舌打ちして、手渡された水を一気に飲み干した。





「・・・やな夢見た」





体に浸透していく水が心を落ち着かせて、やっと久保田の顔をまともに見る。
時任のうしろでソファを背もたれに新聞をめくっていた久保田は小首を傾げて、少し冗談めいた声で言った。





「変な時間に寝るとよく見るんだって、変な夢」





本当に目を通しているのか疑うほど単調にめくられていく新聞を見つめて暫くぼんやりする。
紙擦れの音だけが部屋に響いて、寂寥感が胸を締め付けた。





「久保ちゃん」





全部のページがめくり終わり、久保田が新聞を片付けようと中腰の姿勢になると同時に時任が久保田の名前を呼んで、その声に久保田は座り直しタバコに火を点ける。
そういえば夢でも久保田は最期までタバコを吸っていたなと思い出して、鮮明に覚えている先ほどの悪夢をもう1度頭の中で繰り返す。

血ぬれて横たわる、赤い肢体 それを抱えて叫ぶのは自分自身。
両の頬に添えられた指先にも血がしみて、鉄の臭いとかすかなタバコの匂いが鼻を掠める。全体が赤く染まって表情まで窺えなくて
「時任」





「・・・ぁ、」





優しい声と温かい自分じゃない別な体温に気づきはっとする。久保田はうしろから時任の額と腰に手を当て軽く抱きしめた。
耳元にゆったりとした口調で、まるで小さい子供をあやすみたいに囁く。





「夢は――夢っしょ?」





「・・・ん」





くすぐったい感覚に身じろぐと久保田は時任から手を離してとなりに座る。時任が頭を肩に乗せると、それを包むようにして腕がまわされた。
触れて伝わる体温にただ安心した。一瞬、夢の出来事が現実に思えて。





「昼間に寝るもんじゃねーな」





「そうね」





今は夢の中として、だけどいつかはわからない。今日の夢が予言となってしまう日が来ることだけは、絶対に避けたいと思う。
それには強くなること。そして、未だに何も掴めない自分自身のことを、総て受け入れること。





「・・・とりあえず飯だなっ」





「ああ、それなら――ほら」





「なに?」





久保田は自分のすぐ横に置いておいた紙を手にし、時任の顔の前でひらひら、ひらひら見せつける。
A4サイズの薄い紙に割引の文字。先ほど新聞に挟まれていた広告の1枚だろう。時任は目を輝かせて、久保田から広告を奪い取るように立ち上がった。





「久保ちゃん、電話電話っ」





「はいはい、落ち着きなさいって」





煙草を灰皿に押し潰してゆっくり立ち上がる久保田を催促しながら、現実に在る久保田の姿を瞼に焼き付ける。





消えゆく紫煙はただはかなく。
白昼夢は赤く染まりいつかの未来すら朱に濁す。





***
例によって終わりが微妙。。
地の文は難しいです・・・。なんて言ったら小説じゃなくなっちゃう。