きみをすきなりゆう
「き、せ・・・」
「なんスか、みどりまっち」
いいところなのに、と思いながらも腰をゆるめると彼がこちらに目線を合わせてきた。
眼鏡を外していると長いまつげが際だって、中心の大きな瞳がきらきらと熱を持っている。少しだけ腹が重くなった。
「ぁ、ばか」
「ごめんっス。で、なに?」
そもそも悪いのは彼なのだ。最中に、話があるとばかりに呼び止めるのだから。
優しい俺はきちんと聞いてあげるっスけど。
「おまえ、は、どうして俺といるんだ?」
「は?」
今更?てか、この状況で?
「好きだから、ッスよ」
もういいでしょ、という具合に動きを再開しようとする俺の腰に、彼の足が絡みついてそうさせない。いやでもこれはこれで逆効果っつうか、なんつうか。
「もう、なんなんスか」
「俺はもっと、具体的なことを聞いているのだよ」
あんたって実はめんどくさいひとなんスね、という言葉は飲み込んだ。こちらをずっと見つめている目が、少しばかりにじんでいるような気がしたからだ。
プライドが高くて意地っ張りな緑間っちが?まさか。
「そうッスねえ・・・・・・」
万が一、そうだとしたら、俺、なんかしたッスかねえ?全然見に覚えがないんだけど。
うっすらと張った膜を吸い取るように、瞼にくちづけを落とした。一秒、二秒。
驚きに目を見開くその顔も、普段の強情でよくわからないプライドとおは朝うらないへの信頼も、ごくまれに自信を失って弱くなるその姿も。
みずたまりを食べられた衝撃で彼の足かせは緩んで、その隙に腰を打ち付けた。はぜる水音。こちらを制止する甘い声。
あんたの好きなところ、全部言ったところで、今のあんたには信じられないんだろう。せいぜいその溶けていく脳味噌に吹き込んであげるけれど、きっと聞こえない。きっと届く前に消えてしまう。
でもそれでいい。
「そういうとこ全部、好きっス、よ」
「な、あっあぁあーーーっ」
果てた彼はぐったりと体を沈ませて、奪い去ったはずの雨のしずくが、頬を伝った。
あんたは何も心配しなくていい。俺はきちんとあんたを愛しているのだから。
いつも通り、我が儘で俺のちょっと苦手な、でも絶対に目を離すことのできない、あんたで居てくださいっス。
******
2012年7月24日pixiv投稿作品。
緑間くん弱すぎてダレデスカ状態ですけど…ヘタレワンコな黄瀬君ではなく格好いい黄瀬くんが書きたかった…無念。 |