「君がどうしてもっていうのなら」





身体を開いたのはきまぐれだった。





でも本当はわかっていたんだ。





一度触れたら、二度と戻れないってことくらい。





に じ む 涙 に く ち づ け を





「痛くないですか?猊下」





「だいじょ・・・んっ」





そう言いながらも身体は奥へ奥へと、ベッドを軋ませる。





何だかもう色んなことがどうでもよくなってしまった僕は、気だるく、ギリギリ聞こえるくらいの声で返事した。





今頃隣の部屋も自分たちと変わりのないことをしているんだろうな、と頭の隅で考えて、





自嘲した。





こんな遣る瀬無い気持ちになるくらいなら、最初からしなければ良いのに。





そう考えながら、僕はヨザックを見上げる。





「猊下」





目が合った。





・・・向き合ってるのだから別に普通のことだけど。





そのまま手放した意識の中で、やっぱり考えてしまったのは、彼のことだった。












***












「猊下」





呼びかけても珍しく反応がない。





いつもならばダルそうな声で、それでも何かを発せられるのに。





失礼かなと思いつつも、猊下の顔を覗き込む。





「猊下・・・?」





多分夢の中の猊下は、目から涙を零していた。





固く閉ざされた目と唇が、何故だかとても悲しい。





「忘れちまえば良いのに」





届かない想いを手放さず、抱え込むのはとても辛い。





あなたも、おれも。





「俺なら・・・、」





言葉にしかけて、やめる。





今の彼に見合うだけの何かを、自分は持っているだろうか。





「猊下」





もう一度呼びかけるけれど、状況は変わらず、俺は小さく溜息を吐いた。





目元に顔を近づけ、ゆっくりと触れた。





乾いた唇が潤うのを感じて、これで起きたら後で怒られるなぁと小さく笑った。





顔を離しても起きる気配はないので、音を立てないよう寝台を降りた。





「ではまた」





服をまとうのもそこそこに、扉に近づいて取っ手を回しながら、もう一度寝台の方を向く。





「すきですよ」





最後まで言ってしまう前に扉を閉めて、無性に恥を覚えてその場を早足で去っていった。













***














「・・・馬鹿だねぇ」





必死に寝たふりをしていた自分も、そんな自分を好きだといった庭番も。





「ほんとう・・・」





君だけを想うことが出来たら、どんなに幸せなんだろうか。





***
微・え・ろ!・・・でいいかな。(何)
コンラート←村田前提ヨザムラでした。