そこはとても神秘的で
同じくらい、残酷な場所だった。





44444Hit御礼企画
「 葬 送 歌 」
  悼 み






道の傍らに所々咲いた彼岸花は、その血のような赤を魅せつける様に揺らしていた。
関わりが合ったごく一部の者だけによる葬列の最後尾、少し外れて呆然と歩いている。空は雲さえ染め上げる、目に痛いほどの夕焼けで、見上げて3秒もいられなかった。
・・・遺体は思ったより外傷が少なく、死に顔も安らかだったように思う。冷たくなった身体と対面したのは昨日のことで、もう記憶の隅へと追いやられてしまった。死してこの国に戻って来られたことは不幸中の幸いだと、まるで第三者のような第一感想。きっと死人の体より僕の心の方が冷たいなとやっぱりどこか他人のように感じた。

つらつら続く列の先頭は、彼も愛した魔王陛下。渋谷は僕よりも多く涙を零し、自分の非力さを嘆いた。
ウェラー卿はそんな彼を宥めながらも、手にはきつく拳を作っていた。
フォンヴォルテール卿は眉間の皺をより深くさせていたし、フォンビーレフェルト卿もフォンクライスト卿も彼の死を悼んだ。

――――――僕は
君のその冷たい身体を見詰めながら――――――





・・・・・・・





大体彼はいつも国外任務が多かったから、一緒に過ごした時間なんてきっと数えるほどだろう。国に帰っているときは頼んでもいないのに護衛に付いたり夜は部屋に押し掛けてきたり。その度に彼はウザイとかやめろとか言われるのに、始終ニコニコ、ニコニコ。
それなのに、仕事となると表情は一変して、少し申し訳なさそうに僕の元から去っていく。





そのときの寂しさといったら、ない。



だから、きっとバチが当たったんだ。
僕を放っておいた罰。



僕が素直になれなかった、罪。






ああ。



もう、あの腕に。





あの力強い腕に抱かれることはないんだ。









足元の彼岸花が風に吹かれて、その色を空に映す。痛いくらいの暖色は更に眼尻を熱くさせた。



「村田!」



先頭を歩いているはずの渋谷の、ふいに呼ぶその声に。

僕は答えることができなかった―――――――。

















―――――――−−−−‐‐‐‐-

















「村田っ」



背中に当たる柔らかい感覚と見慣れた天井に一瞬戸惑ったけれど、心配そうに覗き込む渋谷とヨザックの顔を見て気付いた。魔王の執務室で本を読んでいて、いつの間にか寝てしまっていたのだろう。夢が夢だったせいか単に寝ていたからか、咽喉がカラカラに乾いていた。



「俺、水持ってくるな」



悪夢から覚醒して呆としている間に何事か言ったのか、本来ならヨザックが適任であろう仕事を渋谷は買って出て、またヨザックも明るい声で送り出す。



「君が行くべきだろ・・・」



渋谷が部屋から出て行ったあと、張り付いた咽喉から無理矢理声を出してみたが、掠れて聞き取りにくい声になってしまう。そうですねと心無げな声で答えて、ヨザックは僕の体を引き起こすと、ソファに座る僕の前にしゃがみ、小首を傾げて聞いた。



「酷く魘されているご様子でしたけど・・・」



「・・・うん」



先ほどの夢を思い出して、身震いする。恐ろしいほどに鮮明な赤色の世界の中で彷徨うのは夢だけで十分だった。ヨザックの背にゆっくり腕を回し、非力ながらも力を込めると、彼もまた優しく僕を抱きしめた。







せめて渋谷が帰ってくるまでは、このままで居たい。



僕はそう願った。









――――――僕は
君のその冷たい身体を見詰めながら――――――




――――――置いていかないで

そう子供みたいに思っていたんだ。






***
いつもと書き方がエラく違うんですが。あまりやろうとしない、not会話文ダラダラ文章。
雰囲気出たら良いなぁという桜のただの願望です。。出て・・・ますかね?(笑)
死ネタ(夢だけど)はあまりやらないのでドキドキものです。